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eBayの法人化をいつ考えるか|税率・消費税・増えるコストで判断する

更新 公開約15分お金・税金

この記事の3行要約

  • 所得税は7段階の累進、法人税は2段階。段階の作りが違うことが判断の出発点
  • 法人を作れば2年免税、は原則。資本金・特定期間・インボイス登録などで外れる
  • 輸出中心のセラーは還付を受ける側にいることがある。免税に戻るのが得とは限らない
目次

はじめに

売上が伸びてくると、必ず一度は考えることになります。法人にしたほうがいいのだろうか、と。

この判断は、税金の話だけでは決まりません。増える手間、増える固定費、eBay 側でやり直すことも含めて、総額で比べる必要があります。

そして、いちばん誤解が多いのが消費税です。「法人を作れば、また 2 年間は免税になる」という説明をよく見ますが、これは原則であって、外れる条件がいくつもあります。 しかも輸出中心のセラーの場合、そもそも免税に戻ることが得とは限りません。

この記事では、判断に必要な材料を国税庁の記載から整理します。結論は書きません。 材料を揃えて、税理士に相談する準備をするための記事です。

この記事の位置づけ

制度の一般的な整理です。個別の判断は、必ず税理士または税務署にご確認ください。記載は 2026 年 9 月時点で国税庁のページを確認した内容にもとづいています。制度は変わります。

個人としての申告の実務は、別の記事にまとめてあります。

あわせて読みたい

eBay法人化の判断材料は、3つある

法人化の判断を分けると、次の 3 つになります。

材料見るもの
税率の差所得税の段階と、法人税の段階
消費税免税の判定と、輸出免税との組み合わせ
増えるもの手間・固定費・やり直しになる手続き

多くの記事は 1 つめだけを扱います。ただ、実際に判断を分けるのは 2 つめと 3 つめであることが少なくありません。

材料1:所得税と法人税で、税率の段階の作りが違う

まず税率です。国税庁の速算表を、そのまま引きます。

所得税の税率は、分離課税に対するものなどを除くと、5パーセントから45パーセントの7段階に区分されています。

課税される所得金額税率控除額
1,000 円 から 1,949,000 円まで5%0 円
1,950,000 円 から 3,299,000 円まで10%97,500 円
3,300,000 円 から 6,949,000 円まで20%427,500 円
6,950,000 円 から 8,999,000 円まで23%636,000 円
9,000,000 円 から 17,999,000 円まで33%1,536,000 円
18,000,000 円 から 39,999,000 円まで40%2,796,000 円
40,000,000 円 以上45%4,796,000 円

一方、法人税は段階が少なくなります。国税庁の税率表によれば、資本金 1 億円以下の普通法人では、年 800 万円以下の部分が 15%、年 800 万円を超える部分が 23.20% です。

この 15% には注記が 2 つ付いています。1 つは、令和 7 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度のうち、所得金額が年 10 億円を超える事業年度は 17% になるというものです。もう 1 つは適用除外事業者(前 3 年の所得金額の年平均額が 15 億円を超える法人など)で、こちらは年 800 万円以下の部分にも 19% が適用されます。

どちらも、個人から法人化する段階で当たる数字ではありません。ただ、15% は無条件の率ではないということは押さえておいてください。

所得税は 7 段階で上がっていき、法人税は大きく 2 段階です。この構造の違いが、法人化の議論の出発点になります。

ここで注意していただきたいのは、この表だけで比べられるわけではないことです。

住民税や事業税、法人の地方税は別にかかります。法人にすれば自分への役員報酬にも所得税がかかります。「実効税率」として出回っている数字は、その前提を書かないと再現できません。 だからこの記事では、その手の加工した数字を出しません。

令和8年からの防衛特別法人税は、法人の側にだけ乗る

比べるときに、新しく加わった税を 1 つ入れておいてください。

法人の側には、令和 8 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度から防衛特別法人税がかかります。国税庁の令和 7 年度 法人税関係法令の改正の概要によると、税額は、基準法人税額から年 500 万円の基礎控除額を引いた金額に 4% を掛けたものです。法人税額が年 500 万円に届かないうちは、差し引きがゼロになるのでかかりません。

個人の側でも、令和 9 年 1 月 1 日以後に生ずる所得から防衛特別所得税が始まります。ただ、同時に復興特別所得税の率が 2.1% から 1.1% に下がり、国税庁の Q&A は、合計の率(2.1%)は変わらないとしています。

つまり、個人から法人へ移ったときに増えうるのは法人側の 4% のほうで、法人税額が年 500 万円を超える規模になってから効いてきます。これから法人化を考える段階で当たることは少ないはずですが、比べる表に行を 1 つ足しておくと、規模が大きくなったときに見落としません。

比べるなら、自分の数字を持って税理士に見てもらうのが確実です。そのときに必要なのが、次の材料です。

材料2:法人化と消費税の免税は、思っているより条件が多い

ここがこの記事でいちばん書きたかったところです。

免税の判定は「基準期間の課税売上高」

国税庁の記載はこうです。

その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合には、消費税の納税義務が免除されます。

基準期間というのは、個人事業者なら前々年、法人なら前々事業年度のことです。つまり、2 年前の売上で今年の扱いが決まります。

「新しく作れば免税」は、原則の話

新しく開業した個人や、新しく設立した法人には、この基準期間がありません。国税庁は続けてこう書いています。

基準期間における課税売上高がないときまたは基準期間がないときは、原則として納税義務が免除されますが、例えば、次の「納税義務が免除されない場合」のようなときには免除されません。

「原則として」という言葉が入っているところが要点です。同じページに、免除されない条件が並んでいます。eBay セラーに関係しそうなものを挙げます。

免除されない条件内容
特定期間の課税売上高基準期間の課税売上高が 1,000 万円以下でも、特定期間における課税売上高が 1,000 万円を超えた場合は課税事業者になる
資本金基準期間がない事業年度で、事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が 1,000 万円以上のとき
特定新規設立法人これに該当するとき
インボイスの登録適格請求書発行事業者は、基準期間における課税売上高にかかわらず、納税義務は免除されない

特定期間というのは、法人なら「原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後 6 か月の期間」、個人なら「その年の前年の 1 月 1 日から 6 月 30 日までの期間」です。

最後の 1 つが特に重要です。インボイスの登録をしていると、売上の大きさにかかわらず納税義務は免除されません。「法人を作って免税に戻る」という前提が、ここで崩れることがあります。

新設法人が免税にならない 4 つの条件 — 特定期間の課税売上高が 1,000 万円超(法人は前事業年度開始の日以後 6 か月、個人は前年 1/1〜6/30。給与等支払額で判定することもできる)、資本金が 1,000 万円以上(基準期間がない事業年度で、事業年度開始の日の資本金または出資の金額で判定)、特定新規設立法人に該当する(該当するかどうかは要確認)、適格請求書発行事業者である(基準期間の課税売上高にかかわらず、納税義務は免除されない)、「法人を作れば 2 年免税」は原則の話。国税庁 No.6531 に免除されない場合が並んでいる

特定期間の1,000万円は、給与等支払額でも判定できる

表の 1 つめについて、条件がもう一段あります。特定期間の 1,000 万円は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額で判定することもできます。どちらの基準で判定するかは納税者の任意である、と国税庁は書いています。

ここが、1 人でやっているセラーには効きます。従業員を雇わず役員報酬も出していない期間なら給与等支払額はゼロなので、特定期間の課税売上高が 1,000 万円を超えていても、給与のほうで判定すれば免除の側に残せることになります。

ただし、国外事業者はこの選び方ができません。令和 6 年 10 月 1 日以後に開始する課税期間から、その課税期間の初日において国外事業者である場合は、給与等支払額による判定ができないとされています。

eBayの法人成りで、基準期間はどうなるか

国税庁のページには、法人成りについてこう書かれています。個人事業者がいわゆる法人成りにより新規に法人を設立した場合、個人事業者であった期間の課税売上高は、その法人の基準期間の課税売上高には含まれません。

「法人を作れば基準期間がリセットされる」と言われるのは、この扱いのことです。原則が成り立つ根拠はここにあります。

そのうえで、表の 3 つめにあった特定新規設立法人も中身を見ておくと、不安の当たりどころが絞れます。対象は、資本金 1,000 万円未満の新規設立法人のうち、他の者に株式等の 50% 超を直接または間接に保有されるなどして支配されており、かつ、その判定対象者の課税売上高が 5 億円を超えている場合です。

自分ひとりで出資して設立するなら、通常はここに当たりません。法人化で実際に効いてくるのは、特定期間・資本金・インボイス登録の 3 つだと考えておくと、確認する順番が決まります。

輸出中心なら、そもそも免税が得とは限らない

もう 1 つ、方向が逆の話をします。

eBay 輸出の売上は、消費税の上では輸出免税にあたります。そして輸出免税であっても、それに対応する課税仕入れに含まれる消費税は仕入税額控除の対象になります。

つまり、国内で仕入れて海外に売っているセラーは、消費税の還付を受ける側にいることがあります。この場合、免税事業者でいることは、その還付を受けられないという意味になります。

免税が有利になりやすい

  • 国内の仕入れが少ない
  • 経費に含まれる消費税が小さい
  • 申告の手間を避けたい

課税事業者が有利になりやすい

  • 国内で仕入れて海外に売っている
  • 仕入れや経費に含まれる消費税が大きい
  • 還付の手続きの手間を負担できる

どちらが得かは、自分の仕入れの構造で反転します。 「免税に戻れる」ことを法人化の利点として計算に入れる前に、いまの自分が還付を受けているかどうかを確認してください。

なお、課税事業者を選ぶ届出を出した場合、原則として課税事業者となった日から 2 年間は免税事業者に戻れません。 行ったり来たりはできない仕組みです。

消費税還付の実務は、個人の申告の記事で扱っています。

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材料3:法人化で増えるコストと手間

利点だけを並べると判断を誤ります。増えるほうも書きます。

増えるもの中身
申告の手間法人の決算と申告は、個人の確定申告より複雑になる
継続的な費用専門家に依頼する費用が発生する。金額は依頼範囲で変わる
社会保険法人になると加入の扱いが変わる。負担の増減は状況によるので要確認
赤字でもかかるもの法人住民税には所得に関係なくかかる部分がある
作り直すもの銀行口座、クレジットカード、各種の契約名義
許認可中古品を扱うなら、古物商の許可は個人と法人で別の扱いになる。警察署に確認が必要

役員報酬は、あとから自由に変えられない

もう 1 つ、判断に効く制約を書いておきます。

法人にすると、自分への支払いは役員報酬という形になります。この金額は、期の途中で自由に増減できるものではありません。「今月は利益が出たから多めに」という調整はできないと考えてください。

これは資金繰りに直接効きます。売上が季節で大きく動く商材を扱っていると、報酬を低く設定しすぎれば生活が回らず、高く設定しすぎれば法人側の資金が細ります。

個人事業のときは、事業のお金と生活のお金の行き来が比較的自由でした。法人にすると、そこに線が引かれます。 手続きの話というより、日々の資金の扱いが変わるという話です。具体的な扱いは税理士に確認してください。

最後の 2 つは見落とされがちです。口座やカードは、法人名義で作り直しになります。 審査に時間がかかることもあり、その間の支払いをどうするかを先に決めておく必要があります。

古物商の許可も、個人で取ったものがそのまま法人に引き継がれるとは限りません。中古品を扱っているなら、手続きの前に管轄の警察署へ確認してください。

また、個人で青色申告をしている場合、法人化するとその特別控除(最大 65 万円)は使えなくなります。個人側で受けていた控除が消えることも、比較に入れてください。

法人化で変わるもの — 軽くなりうるもの: 税率の段階(所得税 7 段階 / 法人税 2 段階)、経費として扱える範囲、取引先から見た説明のしやすさ、増えるもの: 決算と申告の手間、専門家への費用、社会保険の扱いと、赤字でもかかる部分、口座・カード・契約の名義の作り直し、古物商の許可など、個人と法人で別になるもの、青色申告特別控除(個人側)が使えなくなる、利点だけを並べると判断を誤る。総額で比べる

法人化の前に、個人のままで打てる手もある

法人化を考え始める理由の多くは、「税金が重い」か「信用が足りない」のどちらかです。どちらも、法人化の前に個人のままで打てる手があります。

税金が重い場合。 まず、経費の取りこぼしがないかを確認してください。申告の記事にも書きましたが、事業に使っている部分の按分や、少額の資産の扱いなど、抜けやすい項目があります。青色申告の特別控除を最大限に使えているかも確認してください。

信用が足りない場合。 相手が何を見て判断しているのかを確かめるほうが先です。取引の実績や、継続して仕入れている事実で足りることもあります。「法人だから取引する」ではなく「規模と継続性を見ている」場合、法人格は解決になりません。

利益そのものを増やす打ち手を先に試す、という順番もあります。どこを削ると何ポイント動くかは、別の記事にまとめました。

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そのうえで、それでも足りないとなったときに法人化を検討する、という順番なら無駄がありません。法人化は一度やると簡単には戻せないので、戻せる手から試すのが安全です。

合同会社と株式会社、どちらを選ぶか

会社の作り方には種類があります。個人でやってきたセラーが検討するのは、多くの場合この 2 つです。

合同会社株式会社
設立の手続き比較的簡単定款の認証などが加わる
設立の費用株式会社より抑えられる合同会社より高くなる
決算公告義務なし義務あり
利益の配分出資比率と別に決められる出資比率に応じる
名前の通りやすさ相手によっては説明が要る説明が要らないことが多い

具体的な費用は形態と手続きの進め方で変わるので、法務局と公証役場の案内で確認してください。 この記事では金額を書きません。

一人または少人数で運営するなら、手続きが簡単な合同会社を選ぶセラーが多いです。ただし、取引先や仕入れ先から株式会社であることを求められる業態なら、最初から株式会社にするほうが手戻りがありません。

eBay法人化のあと、eBay側でやること

法人化したら、eBay のアカウントについても確認が必要です。

  • 登録している事業者の情報を、法人のものに更新する
  • 売上の受け取り先を、法人名義の口座に切り替える
  • 支払いに使っているカードの名義を切り替える

この切り替えには、確認や審査の期間が入ることがあります。 売上の受け取りが止まると資金繰りに直結するので、繁忙期を避けて計画してください。

手続きの詳細は変わることがあるので、eBay の案内で最新の手順を確認してください。

法人化の手続きは、どのくらいの流れになるか

判断のあとの話も、大枠だけ知っておくと計画が立てやすくなります。

  1. 会社の名前・本店の所在地・事業の目的・資本金を決める
  2. 定款を作る(株式会社は認証の手続きが加わる)
  3. 資本金を払い込む
  4. 法務局へ設立の登記を申請する
  5. 登記が完了したら、税務署・都道府県・市区町村へ届け出る
  6. 銀行口座を開き、決済に使うカードなどを法人名義にする
  7. eBay 側の登録情報と、売上の受け取り先を切り替える

費用と日数は、形態と進め方で変わります。 この記事では金額を書きません。法務局と公証役場の案内で確認してください。

工程として重いのは 6 と 7 です。口座の開設には審査があり、時間がかかることがあります。 売上の受け取りが止まると資金繰りに直結するので、ここは余裕を持って進めてください。

法人化で税務署に出す届出と、その期限

手順の 5 のうち、税務署に出すものには期限があります。国税庁の No.5100 新設法人の届出書類 と No.2090 新たに事業を始めたときの届出など から、eBay セラーの法人成りで関係しそうなものを並べます。

届出期限
法人設立届出書(定款などの写しを添付)設立の日(設立登記の日)以後 2 か月以内
法人の青色申告の承認申請書(設立 1 期目から青色にする場合)設立の日以後 3 か月を経過した日と、1 期目の事業年度終了の日のいずれか早い日の前日まで
事前確定届出給与に関する届出書(使う場合)設立の日以後 2 か月を経過する日まで
個人事業の開廃業等届出書(個人事業をやめる側)事業を廃止した日の属する年分の確定申告期限まで

いちばん落としやすいのは 2 行目です。1 期目が短い法人だと、「3 か月」より先に事業年度が終わるので、期限が早く来ます。出し忘れると、1 期目は青色申告になりません。

消費税の届出(課税事業者を選ぶ、簡易課税を選ぶなど)は、上の表とは別に、事業年度の始まりとの関係で期限が決まります。原則は「課税事業者になろうとする課税期間の開始の日の前日まで」ですが、No.6531 によると、新たに事業を始めた課税期間に限っては、その課税期間の末日までに出せば、その課税期間から課税事業者になれます。設立 1 期目から還付を取りに行くなら、ここが使えます。還付を取る側に立つなら、消費税還付の手続きの記事で順番を確認してから出してください。

期の途中でも法人化できるのか

できます。ただし、個人事業としての期間と法人としての期間が同じ年に混在すると、その年は個人の申告と法人の決算の両方が発生します。

手間を減らしたいなら、区切りのよい時期に合わせるという考え方があります。一方で、消費税の判定は事業年度で動くので、時期の選び方が納税額に影響することもあります。 どちらを優先するかは、自分の数字を見ないと決められません。ここも相談の材料に入れてください。

eBay法人化を判断する順番

材料が揃ったら、この順番で考えると迷いにくくなります。

フロー図: いまの課税所得と課税売上高を出す / 消費税で還付を受けているか確認する / インボイスの登録状況を確認する / 法人にしたときに増える費用と手間を並べる / 自分の数字を持って税理士に相談する

順番が大事なのは、2 つめと 3 つめの結果で 1 つめの結論が変わりうるからです。税率の差だけを見て決めると、消費税で損をすることがあります。

そして最後は専門家に相談してください。この記事が目指しているのは、相談に持っていく材料を揃えることまでです。

判断の順番 — いまの課税所得と課税売上高を出す(去年 1 年分。月別に出せるとなおよい)、消費税で還付を受けているか確認する(輸出中心なら受ける側にいることがある。ここで結論が反転する)、インボイスの登録状況を確認する(適格請求書発行事業者は売上の大きさにかかわらず免除されない)、増える費用と手間を並べる(申告・社会保険・名義の作り直し・許認可)、自分の数字を持って税理士に相談する(この記事が目指すのは、相談に持っていく材料を揃えるところまで)、税率の差だけを見て決めると、消費税で損をすることがある

数字が出せない状態では、判断できない

相談に行くときに必要なのは、意見ではなく数字です。

  • 年間の売上(できれば月別)
  • 仕入れの金額と、そのうち国内で消費税を払っているもの
  • 経費の内訳
  • 手元に残っている金額

これらが表計算ソフトとメールと通帳に散っていると、まず数字を作るところに何日もかかります。 そして、そこで力尽きて相談が先送りになります。

私たちが開発している Trade Force は、商品・在庫・出品・注文・発送・売上をひとつの画面で管理する定額制の OMS(受注管理システム)です。

売上の画面では、期間を指定して販売数・注文数・売上金額・手数料・返金額・入金額を確認できます。仕入の記録も、仕入価格・送料・購入日・追跡番号まで残せます。「去年 1 年でいくら売って、いくら仕入れたか」を、その場で出せる状態にしておくことが、この判断の前提です。

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法人化の前に、寄りを数えておく

法人にするかどうかを考える規模になると、売上が 1 か所に寄っていることも同時に効いてきます。止まったときの損失が、規模に比例して大きくなるためです。

寄りの数え方と、縮小や撤退の基準を、別の記事にまとめました。

このあと紹介している記事 (1 本)

まとめ

法人化は、得か損かの二択ではありません。自分の数字を当てはめて判断するものです。

  • 所得税は 7 段階の累進、法人税は 2 段階。構造が違う
  • 実効税率として出回っている数字は、前提を書かないと再現できない
  • 免税の判定は、基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高
  • 新設法人が免税になるのは原則。特定期間・資本金・特定新規設立法人・インボイス登録で外れる
  • 輸出中心なら、還付を受ける側にいることがある。免税に戻るのが得とは限らない
  • 増えるもの(申告の手間・継続費用・社会保険・名義の作り直し・許認可)も並べて比べる
  • 順番は、数字を出す → 消費税を確認する → 増えるものを並べる → 相談する

まずは、去年 1 年の課税売上高と、国内の仕入れにかかった消費税の額を出してみてください。 判断はそこから始まります。

よくある質問

Q1.年商がいくらになったら法人化すべきですか
A1.

金額の線を引くことはできません。同じ年商でも、原価率と経費の構成が違えば課税所得が変わりますし、消費税の扱いも仕入れの構造で変わるからです。

この記事で税率の表をそのまま載せているのは、自分の課税所得を当てはめてもらうためです。そのうえで、消費税で還付を受けているかどうかを確認してください。「年商 1,000 万円で法人化」という説明は、消費税の判定基準の数字が独り歩きしたものであることが多いです。

Q2.法人を作れば、消費税がまた2年間免除されますか
A2.

原則としてはそうですが、外れる条件がいくつもあります。国税庁のページには「原則として納税義務が免除されます」と書かれたうえで、免除されない場合が並んでいます。

eBay セラーに関係しそうなのは 4 つです。特定期間の課税売上高が 1,000 万円を超えた場合、事業年度開始の日の資本金が 1,000 万円以上の場合、特定新規設立法人に該当する場合、そして適格請求書発行事業者である場合です。とくに最後は、インボイスの登録をしていれば売上の大きさにかかわらず免除されません。

Q3.法人1期目の前半で売上が1,000万円を超えたら、2期目から課税事業者ですか
A3.

必ずしもそうはなりません。特定期間の 1,000 万円は課税売上高で判定するのが原則ですが、課税売上高に代えて給与等支払額の合計額で判定することもできるとされていて、どちらの基準で判定するかは納税者の任意です。

役員報酬も従業員の給与も出していない期間なら、給与等支払額はゼロになります。売上のほうが 1,000 万円を超えていても、給与のほうで判定すれば免除の側に残せることになります。ただし国外事業者はこの選び方ができません。自分の状況で使えるかどうかは、税務署か税理士に確認してください。

Q4.輸出しかしていない場合、消費税はどう考えればいいですか
A4.

輸出取引は消費税が免除されます。そして、それに対応する課税仕入れに含まれる消費税は仕入税額控除の対象になります。

つまり、国内で仕入れて海外に売っているなら、払った消費税が戻ってくる側にいる可能性があります。 その場合、免税事業者でいることは還付を受けられないという意味になるので、「免税に戻れる」ことが利点にならないこともあります。国内の仕入れが多いか少ないかで結論が反転するので、実際の数字で確認してください。

Q5.法人化すると青色申告はどうなりますか
A5.

個人で受けていた青色申告特別控除(最大 65 万円)は、法人には引き継がれません。法人で青色申告をするには、法人として改めて承認申請書を出します。

設立 1 期目から青色にするなら、期限は設立の日以後 3 か月を経過した日と、1 期目の事業年度終了の日の、いずれか早い日の前日までです。法人設立届出書(設立の日以後 2 か月以内)と一緒に準備しておくと、出し忘れを防げます。

Q6.防衛特別法人税は、小さな法人にもかかりますか
A6.

令和 8 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度から、法人税を納める法人が対象です。ただ、税額は基準法人税額から年 500 万円の基礎控除額を引いた金額に 4% を掛けて出すので、法人税額が年 500 万円以下なら差し引きゼロで、かかりません。

個人から法人化したばかりの段階では、当たらないことが多いはずです。規模が大きくなってきたら、比べる表に入れてください。

Q7.合同会社と株式会社では、どちらがいいですか
A7.

一人または少人数で運営するなら、手続きが比較的簡単な合同会社を選ぶセラーが多いです。決算公告の義務もありません。

株式会社を選ぶ理由になるのは、取引先や仕入れ先から求められる場合と、将来的に外部からの出資を考えている場合です。あとから変更することもできますが、そのぶんの手続きと費用がかかります。 求められる場面がすでにあるなら、最初から株式会社にするほうが手戻りは少なくなります。

Q8.法人化の前に準備しておくことはありますか
A8.

数字を出せる状態にすることです。年間の売上、仕入れの金額、そのうち国内で消費税を払っている分、経費の内訳。この 4 つがあれば、相談の場で具体的な話ができます。

もう 1 つ、切り替えに時間がかかるものを洗い出しておいてください。 銀行口座、クレジットカード、契約の名義、中古品を扱うなら古物商の許可。これらは申請から使えるようになるまで時間が空くことがあり、その間の支払いをどうするかを決めておく必要があります。

参照リンク

この記事を書いた人

Trade Force 運営チーム

Trade Force 運営チーム

越境 EC セラーのための、AI ネイティブな次世代 OS「Trade Force」の運営チーム。自らも eBay で販売しており、現場の実体験に基づく情報を発信しています。

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