eBayの法人化をいつ考えるか|税率・消費税・増えるコストで判断する
この記事の3行要約
- 所得税は7段階の累進、法人税は2段階。段階の作りが違うことが判断の出発点
- 法人を作れば2年免税、は原則。資本金・特定期間・インボイス登録などで外れる
- 輸出中心のセラーは還付を受ける側にいることがある。免税に戻るのが得とは限らない
目次
- 1.はじめに
- 2.eBay法人化の判断材料は、3つある
- 3.材料1:税率の段階の作りが違う
- 4.材料2:消費税は、思っているより条件が多い
- 4-1.免税の判定は「基準期間の課税売上高」
- 4-2.「新しく作れば免税」は、原則の話
- 4-3.輸出中心なら、そもそも免税が得とは限らない
- 5.材料3:法人にすると、増えるもの
- 5-1.役員報酬は、あとから自由に変えられない
- 6.法人化の前に、個人のままで打てる手もある
- 7.合同会社と株式会社、どちらを選ぶか
- 8.eBay側でやること
- 9.手続きは、どのくらいの流れになるか
- 9-1.期の途中でも法人化できるのか
- 10.判断の順番
- 11.数字が出せない状態では、判断できない
- 12.まとめ
- 13.よくある質問
- 14.参照リンク
はじめに
売上が伸びてくると、必ず一度は考えることになります。法人にしたほうがいいのだろうか、と。
この判断は、税金の話だけでは決まりません。増える手間、増える固定費、eBay 側でやり直すことも含めて、総額で比べる必要があります。
そして、いちばん誤解が多いのが消費税です。「法人を作れば、また 2 年間は免税になる」という説明をよく見ますが、これは原則であって、外れる条件がいくつもあります。 しかも輸出中心のセラーの場合、そもそも免税に戻ることが得とは限りません。
この記事では、判断に必要な材料を国税庁の記載から整理します。結論は書きません。 材料を揃えて、税理士に相談する準備をするための記事です。
制度の一般的な整理です。個別の判断は、必ず税理士または税務署にご確認ください。記載は 2026 年 8 月時点で国税庁のページを確認した内容にもとづいています。制度は変わります。
個人としての申告の実務は、別の記事にまとめてあります。
eBay法人化の判断材料は、3つある
法人化の判断を分けると、次の 3 つになります。
| 材料 | 見るもの |
|---|---|
| 税率の差 | 所得税の段階と、法人税の段階 |
| 消費税 | 免税の判定と、輸出免税との組み合わせ |
| 増えるもの | 手間・固定費・やり直しになる手続き |
多くの記事は 1 つめだけを扱います。ただ、実際に判断を分けるのは 2 つめと 3 つめであることが少なくありません。
材料1:税率の段階の作りが違う
まず税率です。国税庁の速算表を、そのまま引きます。
所得税の税率は、分離課税に対するものなどを除くと、5パーセントから45パーセントの7段階に区分されています。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000 円 から 1,949,000 円まで | 5% | 0 円 |
| 1,950,000 円 から 3,299,000 円まで | 10% | 97,500 円 |
| 3,300,000 円 から 6,949,000 円まで | 20% | 427,500 円 |
| 6,950,000 円 から 8,999,000 円まで | 23% | 636,000 円 |
| 9,000,000 円 から 17,999,000 円まで | 33% | 1,536,000 円 |
| 18,000,000 円 から 39,999,000 円まで | 40% | 2,796,000 円 |
| 40,000,000 円 以上 | 45% | 4,796,000 円 |
一方、法人税は段階が少なくなります。国税庁の税率表によれば、資本金 1 億円以下の普通法人では、年 800 万円以下の部分が 15%(一定の場合は 17%)、年 800 万円を超える部分が 23.20% です。
所得税は 7 段階で上がっていき、法人税は大きく 2 段階です。この構造の違いが、法人化の議論の出発点になります。
ここで注意していただきたいのは、この表だけで比べられるわけではないことです。
住民税や事業税、法人の地方税は別にかかります。法人にすれば自分への役員報酬にも所得税がかかります。「実効税率」として出回っている数字は、その前提を書かないと再現できません。 だからこの記事では、その手の加工した数字を出しません。
比べるなら、自分の数字を持って税理士に見てもらうのが確実です。そのときに必要なのが、次の材料です。
材料2:消費税は、思っているより条件が多い
ここがこの記事でいちばん書きたかったところです。
免税の判定は「基準期間の課税売上高」
国税庁の記載はこうです。
その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合には、消費税の納税義務が免除されます。
基準期間というのは、個人事業者なら前々年、法人なら前々事業年度のことです。つまり、2 年前の売上で今年の扱いが決まります。
「新しく作れば免税」は、原則の話
新しく開業した個人や、新しく設立した法人には、この基準期間がありません。国税庁は続けてこう書いています。
基準期間における課税売上高がないときまたは基準期間がないときは、原則として納税義務が免除されますが、例えば、次の「納税義務が免除されない場合」のようなときには免除されません。
「原則として」という言葉が入っているところが要点です。同じページに、免除されない条件が並んでいます。eBay セラーに関係しそうなものを挙げます。
| 免除されない条件 | 内容 |
|---|---|
| 特定期間の課税売上高 | 基準期間の課税売上高が 1,000 万円以下でも、特定期間における課税売上高が 1,000 万円を超えた場合は課税事業者になる |
| 資本金 | 基準期間がない事業年度で、事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が 1,000 万円以上のとき |
| 特定新規設立法人 | これに該当するとき |
| インボイスの登録 | 適格請求書発行事業者は、基準期間における課税売上高にかかわらず、納税義務は免除されない |
特定期間というのは、法人なら「原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後 6 か月の期間」、個人なら「その年の前年の 1 月 1 日から 6 月 30 日までの期間」です。
最後の 1 つが特に重要です。インボイスの登録をしていると、売上の大きさにかかわらず納税義務は免除されません。「法人を作って免税に戻る」という前提が、ここで崩れることがあります。

輸出中心なら、そもそも免税が得とは限らない
もう 1 つ、方向が逆の話をします。
eBay 輸出の売上は、消費税の上では輸出免税にあたります。そして輸出免税であっても、それに対応する課税仕入れに含まれる消費税は仕入税額控除の対象になります。
つまり、国内で仕入れて海外に売っているセラーは、消費税の還付を受ける側にいることがあります。この場合、免税事業者でいることは、その還付を受けられないという意味になります。
免税が有利になりやすい
- 国内の仕入れが少ない
- 経費に含まれる消費税が小さい
- 申告の手間を避けたい
課税事業者が有利になりやすい
- 国内で仕入れて海外に売っている
- 仕入れや経費に含まれる消費税が大きい
- 還付の手続きの手間を負担できる
どちらが得かは、自分の仕入れの構造で反転します。 「免税に戻れる」ことを法人化の利点として計算に入れる前に、いまの自分が還付を受けているかどうかを確認してください。
なお、課税事業者を選ぶ届出を出した場合、原則として課税事業者となった日から 2 年間は免税事業者に戻れません。 行ったり来たりはできない仕組みです。
消費税還付の実務は、個人の申告の記事で扱っています。
材料3:法人にすると、増えるもの
利点だけを並べると判断を誤ります。増えるほうも書きます。
| 増えるもの | 中身 |
|---|---|
| 申告の手間 | 法人の決算と申告は、個人の確定申告より複雑になる |
| 継続的な費用 | 専門家に依頼する費用が発生する。金額は依頼範囲で変わる |
| 社会保険 | 法人になると加入の扱いが変わる。負担の増減は状況によるので要確認 |
| 赤字でもかかるもの | 法人住民税には所得に関係なくかかる部分がある |
| 作り直すもの | 銀行口座、クレジットカード、各種の契約名義 |
| 許認可 | 中古品を扱うなら、古物商の許可は個人と法人で別の扱いになる。警察署に確認が必要 |
役員報酬は、あとから自由に変えられない
もう 1 つ、判断に効く制約を書いておきます。
法人にすると、自分への支払いは役員報酬という形になります。この金額は、期の途中で自由に増減できるものではありません。「今月は利益が出たから多めに」という調整はできないと考えてください。
これは資金繰りに直接効きます。売上が季節で大きく動く商材を扱っていると、報酬を低く設定しすぎれば生活が回らず、高く設定しすぎれば法人側の資金が細ります。
個人事業のときは、事業のお金と生活のお金の行き来が比較的自由でした。法人にすると、そこに線が引かれます。 手続きの話というより、日々の資金の扱いが変わるという話です。具体的な扱いは税理士に確認してください。
最後の 2 つは見落とされがちです。口座やカードは、法人名義で作り直しになります。 審査に時間がかかることもあり、その間の支払いをどうするかを先に決めておく必要があります。
古物商の許可も、個人で取ったものがそのまま法人に引き継がれるとは限りません。中古品を扱っているなら、手続きの前に管轄の警察署へ確認してください。
また、個人で青色申告をしている場合、法人化するとその特別控除(最大 65 万円)は使えなくなります。個人側で受けていた控除が消えることも、比較に入れてください。

法人化の前に、個人のままで打てる手もある
法人化を考え始める理由の多くは、「税金が重い」か「信用が足りない」のどちらかです。どちらも、法人化の前に個人のままで打てる手があります。
税金が重い場合。 まず、経費の取りこぼしがないかを確認してください。申告の記事にも書きましたが、事業に使っている部分の按分や、少額の資産の扱いなど、抜けやすい項目があります。青色申告の特別控除を最大限に使えているかも確認してください。
信用が足りない場合。 相手が何を見て判断しているのかを確かめるほうが先です。取引の実績や、継続して仕入れている事実で足りることもあります。「法人だから取引する」ではなく「規模と継続性を見ている」場合、法人格は解決になりません。
利益そのものを増やす打ち手を先に試す、という順番もあります。どこを削ると何ポイント動くかは、別の記事にまとめました。
そのうえで、それでも足りないとなったときに法人化を検討する、という順番なら無駄がありません。法人化は一度やると簡単には戻せないので、戻せる手から試すのが安全です。
合同会社と株式会社、どちらを選ぶか
会社の作り方には種類があります。個人でやってきたセラーが検討するのは、多くの場合この 2 つです。
| 合同会社 | 株式会社 | |
|---|---|---|
| 設立の手続き | 比較的簡単 | 定款の認証などが加わる |
| 設立の費用 | 株式会社より抑えられる | 合同会社より高くなる |
| 決算公告 | 義務なし | 義務あり |
| 利益の配分 | 出資比率と別に決められる | 出資比率に応じる |
| 名前の通りやすさ | 相手によっては説明が要る | 説明が要らないことが多い |
具体的な費用は形態と手続きの進め方で変わるので、法務局と公証役場の案内で確認してください。 この記事では金額を書きません。
一人または少人数で運営するなら、手続きが簡単な合同会社を選ぶセラーが多いです。ただし、取引先や仕入れ先から株式会社であることを求められる業態なら、最初から株式会社にするほうが手戻りがありません。
eBay側でやること
法人化したら、eBay のアカウントについても確認が必要です。
- 登録している事業者の情報を、法人のものに更新する
- 売上の受け取り先を、法人名義の口座に切り替える
- 支払いに使っているカードの名義を切り替える
この切り替えには、確認や審査の期間が入ることがあります。 売上の受け取りが止まると資金繰りに直結するので、繁忙期を避けて計画してください。
手続きの詳細は変わることがあるので、eBay の案内で最新の手順を確認してください。
手続きは、どのくらいの流れになるか
判断のあとの話も、大枠だけ知っておくと計画が立てやすくなります。
- 会社の名前・本店の所在地・事業の目的・資本金を決める
- 定款を作る(株式会社は認証の手続きが加わる)
- 資本金を払い込む
- 法務局へ設立の登記を申請する
- 登記が完了したら、税務署・都道府県・市区町村へ届け出る
- 銀行口座を開き、決済に使うカードなどを法人名義にする
- eBay 側の登録情報と、売上の受け取り先を切り替える
費用と日数は、形態と進め方で変わります。 この記事では金額を書きません。法務局と公証役場の案内で確認してください。
工程として重いのは 6 と 7 です。口座の開設には審査があり、時間がかかることがあります。 売上の受け取りが止まると資金繰りに直結するので、ここは余裕を持って進めてください。
期の途中でも法人化できるのか
できます。ただし、個人事業としての期間と法人としての期間が同じ年に混在すると、その年は個人の申告と法人の決算の両方が発生します。
手間を減らしたいなら、区切りのよい時期に合わせるという考え方があります。一方で、消費税の判定は事業年度で動くので、時期の選び方が納税額に影響することもあります。 どちらを優先するかは、自分の数字を見ないと決められません。ここも相談の材料に入れてください。
判断の順番
材料が揃ったら、この順番で考えると迷いにくくなります。
順番が大事なのは、2 つめと 3 つめの結果で 1 つめの結論が変わりうるからです。税率の差だけを見て決めると、消費税で損をすることがあります。
そして最後は専門家に相談してください。この記事が目指しているのは、相談に持っていく材料を揃えることまでです。

数字が出せない状態では、判断できない
相談に行くときに必要なのは、意見ではなく数字です。
- 年間の売上(できれば月別)
- 仕入れの金額と、そのうち国内で消費税を払っているもの
- 経費の内訳
- 手元に残っている金額
これらが表計算ソフトとメールと通帳に散っていると、まず数字を作るところに何日もかかります。 そして、そこで力尽きて相談が先送りになります。
私たちが開発している Trade Force は、商品・在庫・出品・注文・発送・売上をひとつの画面で管理する定額制の OMS(受注管理システム)です。
売上の画面では、期間を指定して販売数・注文数・売上金額・手数料・返金額・入金額を確認できます。仕入の記録も、仕入価格・送料・購入日・追跡番号まで残せます。「去年 1 年でいくら売って、いくら仕入れたか」を、その場で出せる状態にしておくことが、この判断の前提です。
まとめ
法人化は、得か損かの二択ではありません。自分の数字を当てはめて判断するものです。
- 所得税は 7 段階の累進、法人税は 2 段階。構造が違う
- 実効税率として出回っている数字は、前提を書かないと再現できない
- 免税の判定は、基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高
- 新設法人が免税になるのは原則。特定期間・資本金・特定新規設立法人・インボイス登録で外れる
- 輸出中心なら、還付を受ける側にいることがある。免税に戻るのが得とは限らない
- 増えるもの(申告の手間・継続費用・社会保険・名義の作り直し・許認可)も並べて比べる
- 順番は、数字を出す → 消費税を確認する → 増えるものを並べる → 相談する
まずは、去年 1 年の課税売上高と、国内の仕入れにかかった消費税の額を出してみてください。 判断はそこから始まります。
よくある質問
Q1.年商がいくらになったら法人化すべきですか
金額の線を引くことはできません。同じ年商でも、原価率と経費の構成が違えば課税所得が変わりますし、消費税の扱いも仕入れの構造で変わるからです。
この記事で税率の表をそのまま載せているのは、自分の課税所得を当てはめてもらうためです。そのうえで、消費税で還付を受けているかどうかを確認してください。「年商 1,000 万円で法人化」という説明は、消費税の判定基準の数字が独り歩きしたものであることが多いです。
Q2.法人を作れば、消費税がまた2年間免除されますか
原則としてはそうですが、外れる条件がいくつもあります。国税庁のページには「原則として納税義務が免除されます」と書かれたうえで、免除されない場合が並んでいます。
eBay セラーに関係しそうなのは 4 つです。特定期間の課税売上高が 1,000 万円を超えた場合、事業年度開始の日の資本金が 1,000 万円以上の場合、特定新規設立法人に該当する場合、そして適格請求書発行事業者である場合です。とくに最後は、インボイスの登録をしていれば売上の大きさにかかわらず免除されません。
Q3.輸出しかしていない場合、消費税はどう考えればいいですか
輸出取引は消費税が免除されます。そして、それに対応する課税仕入れに含まれる消費税は仕入税額控除の対象になります。
つまり、国内で仕入れて海外に売っているなら、払った消費税が戻ってくる側にいる可能性があります。 その場合、免税事業者でいることは還付を受けられないという意味になるので、「免税に戻れる」ことが利点にならないこともあります。国内の仕入れが多いか少ないかで結論が反転するので、実際の数字で確認してください。
Q4.合同会社と株式会社では、どちらがいいですか
一人または少人数で運営するなら、手続きが比較的簡単な合同会社を選ぶセラーが多いです。決算公告の義務もありません。
株式会社を選ぶ理由になるのは、取引先や仕入れ先から求められる場合と、将来的に外部からの出資を考えている場合です。あとから変更することもできますが、そのぶんの手続きと費用がかかります。 求められる場面がすでにあるなら、最初から株式会社にするほうが手戻りは少なくなります。
Q5.法人化の前に準備しておくことはありますか
数字を出せる状態にすることです。年間の売上、仕入れの金額、そのうち国内で消費税を払っている分、経費の内訳。この 4 つがあれば、相談の場で具体的な話ができます。
もう 1 つ、切り替えに時間がかかるものを洗い出しておいてください。 銀行口座、クレジットカード、契約の名義、中古品を扱うなら古物商の許可。これらは申請から使えるようになるまで時間が空くことがあり、その間の支払いをどうするかを決めておく必要があります。
参照リンク
この記事を書いた人
Trade Force 運営チーム
越境EC向け販売管理ツール「Trade Force」の運営チーム。自らも eBay で日本のトレーディングカードを販売しており、現場の実体験に基づく情報を発信しています。
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