eBayの在庫回転率とセルスルーレート|測るものが違う2つの指標
この記事の3行要約
- 在庫回転率は自分の在庫が何回入れ替わったか、セルスルーレートは市場の出品のうちどれだけ売れたか
- Terapeakのセルスルー率には「90日以内に販売された商品の検索に対して」という限定が付く
- 回転を上げる手は仕入れ側・値付け側・切る側の3方向。遅い原因がどこにあるかで選ぶ
目次
- 1.はじめに
- 2.eBayの在庫回転率とセルスルーレートは、別の指標
- 3.eBay在庫回転率の出し方
- 4.eBayのセルスルーレートには、90日という限定が付く
- 4-1.計算の粒度をどこに置くか
- 4-2.計算方法を、途中で変えない
- 5.Terapeakを使わずに、検索画面でセルスルーレートを出すとき
- 6.自分の出品でも、eBayのセルスルーレートは出せる
- 7.eBay在庫回転率が低いとき、在庫が食べている4つのもの
- 8.eBay在庫回転率を上げる手は3方向ある
- 8-1.3方向のうち、どれから試すか
- 9.eBay在庫回転率と利益率は、たいてい逆を向く
- 10.回転が速い商材だけを選べばいいのか
- 11.eBayの在庫を3つに分けて、扱いを変える
- 12.eBay在庫回転率を上げすぎると、在庫切れが増える
- 13.仕入れ先の性質で、eBay在庫回転率の読み方が変わる
- 14.保有コストを、値付けの下限に入れる
- 15.月に一度、同じ形で並べる
- 16.数字を出すには、在庫金額が分かっている必要がある
- 17.動かない在庫を、初めてまとめて見る時期
- 18.まとめ
- 19.よくある質問
- 20.参照リンク
はじめに
在庫は増えているのに、口座の残高は増えていない。この状態を説明する言葉として「回転が悪い」がよく使われます。
ただ、回転にまつわる指標は 2 つあり、測っている対象がまったく違います。混同したまま「回転が悪い」と言っていると、打ち手を選べません。
この記事では、在庫回転率とセルスルーレートを切り分けて、それぞれをどの判断に使うのかを決めます。在庫管理そのものの全体像は、別の記事にまとめてあります。
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eBayの在庫回転率とセルスルーレートは、別の指標
在庫回転率は自分の在庫が何回入れ替わったかを、セルスルーレートは市場の出品のうちどれだけ売れたかを測ります。並べると、こう違います。
| 在庫回転率 | セルスルーレート | |
|---|---|---|
| 測っているもの | 自分の在庫が期間中に何回入れ替わったか | 市場に出ている出品のうち、どれだけ売れたか |
| 見る場所 | 自分の帳簿 | eBay や Terapeak の画面 |
| 使う場面 | 手元の資金が回っているかの確認 | これから仕入れるかどうかの判断 |
| 動かし方 | 自分の在庫の持ち方を変える | 変えられない。市場の状態を読むだけ |
片方は自分の内側、もう片方は外側の数字です。
「セルスルーレートが高いのに在庫回転率が低い」という状態は、普通に起こります。市場ではよく売れている商材なのに、自分の在庫が動いていない。この場合、問題は商材選びではなく、値付けか出品の質か、在庫の持ちすぎのどれかにあります。
eBay在庫回転率の出し方
在庫回転率は、一定期間の売上原価を、その期間の平均在庫金額で割って出します。会計で使われる一般的な指標で、eBay 固有の制度ではないので、計算式もそのまま使えます。
在庫回転率 = 一定期間の売上原価 ÷ その期間の平均在庫金額
「売上原価」は、その期間に売れた商品の仕入れ値の合計です。売価ではありません。「平均在庫金額」は、期首と期末の在庫金額を足して 2 で割ったものでも足ります。
たとえば、1 年間の売上原価が 600 万円、平均在庫金額が 150 万円なら、回転率は 4 回です。在庫がその年に 4 回入れ替わった、という意味になります。
もうひとつ、日数で見る形もあります。
在庫回転日数 = 期間の日数 ÷ 在庫回転率
回転率 4 回なら、365 ÷ 4 で約 91 日。仕入れてから資金に戻るまで、平均で 3 か月かかっているということです。この日数のほうが、体感と結びつきやすいと思います。
「在庫回転率は ◯ 回以上」という基準は、この記事では示しません。商材で変わりすぎるためです。
トレーディングカードのように回転の速い商材と、専門的な機材のように買い手が限られる商材では、成立する回転率がまったく違います。比べる相手は他人ではなく、自分の前期です。

eBayのセルスルーレートには、90日という限定が付く
セルスルーレートは、出品された数のうち何割が売れたかを示す指標です。
セルスルーレート = 売れた数 ÷ 出品された数
これは自分の在庫の話ではなく、その商材が市場でどれだけ動いているかの話です。仕入れる前に「この商材は売れるのか」を判断するために使います。
ここで押さえておきたいのが、算出の範囲です。Terapeakのセルスルー率には、「90 日以内に販売された商品の検索に対して」という限定が付いています。
つまり、直近 90 日という窓の中の話です。季節性のある商材だと、窓の位置によって数字が変わります。オフシーズンに見た数字を、シーズン中の判断に使わないようにしてください。
判断の基準となる水準については、リサーチの記事に一本化しています。
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計算の粒度をどこに置くか
回転率は、全体で 1 つ出すこともできますし、商材のグループごとに出すこともできます。
全体で出す。 事業として資金が回っているかを見るときの数字です。月次や四半期で並べると、傾向がつかめます。
グループごとに出す。 商材の系統ごとに出すと、どこで詰まっているかが分かります。カメラは回っているのにアパレルが止まっている、という状態は全体の数字では見えません。
1 商品ごとに出す。 回転率という形では出しにくいので、代わりに「仕入れてから売れるまでの日数」を記録します。1 件ずつなら、これが実務的です。
始めるなら、全体と、商材の系統ごとの 2 段階で足ります。1 商品ごとの日数は、切る判断をするときに個別で見れば十分です。
計算方法を、途中で変えない
在庫回転率には、売上原価で計算する方法と、売上高で計算する方法があります。この記事では売上原価で書いていますが、どちらでも構いません。
大事なのは、決めた方法を続けることです。売上高で計算すると、原価で計算したときより数字が大きく出ます。途中で切り替えると、改善したように見えて実は方法が変わっただけ、ということが起きます。
平均在庫金額の出し方も同じです。期首と期末の平均でも、毎月末の平均でも構いませんが、揃えてください。
Terapeakを使わずに、検索画面でセルスルーレートを出すとき
eBay の検索画面でも、販売済み(Sold)に絞った件数と、いま出品中の件数を数えれば、セルスルーレートの目安は出せます。ただし、Terapeak の数字と同じものにはなりません。違いは 3 つあります。
期間が 90 日で固定される。 公式ヘルプは、eBay の終了済みの出品の検索結果には過去 90 日以内に終了した出品しか含まれない、と書いています。Terapeak のように期間を選べないので、季節の山に当たっているかどうかを、自分で頭に置いておく必要があります。
関連する出品が混ざる。 同じヘルプは、Terapeak(製品調査)の検索は入力した語に一致するものに絞るのに対して、eBay の検索結果には「関連」する結果が含まれることが多い、としています。とくに一致する出品が少ない語では、別の商品の件数を数えていることがあります。数える前に、上から数件のタイトルを開いて、同じ商品かを確かめてください。
分子と分母で、時点がずれる。 販売済みの件数は 90 日の累計ですが、出品中の件数は今日の時点の数です。
最後の点から、式の置き方で数字が大きく変わります。
| 式 | 読み方 |
|---|---|
| 販売済みの件数 ÷ 出品中の件数 | 出品 1 件あたり、90 日で何件売れたか。100% を超えることがある |
| 販売済みの件数 ÷(販売済みの件数 + 出品中の件数) | 売れた件数と残っている件数を合わせた中で、売れた割合。100% を超えない |
たとえば 90 日で 30 件売れていて、いま 20 件出ているなら、前者は 150%、後者は 60% です。同じ市場を見て、どちらの式を使ったかだけで数字が 2 倍以上違います。
だから、式を 1 つに決めて、Terapeak の数字とは並べないことです。Terapeak のセルスルー率がどういう式で出ているかは、製品調査の公式ヘルプには書かれていません。他人の「◯% 以上なら仕入れてよい」を当てるときも、その人がどちらの式で出したかが分からなければ、比べようがありません。
自分の出品でも、eBayのセルスルーレートは出せる
セルスルーレートは市場の数字だと書きましたが、同じ計算を自分の出品に当てることもできます。
自分のセルスルーレート = 期間内に売れた自分の出品数 ÷ 期間内に出していた自分の出品数
この数字そのものに意味があるというより、市場の数字と並べたときに、差の意味が読めるところに価値があります。
- 市場が高くて、自分が低い。 商材の選び方ではなく、出品の作り方か値付けの側に原因があります
- 市場も自分も低い。 商材そのものが動いていません。値下げしても効きにくい領域です
- 市場が低くて、自分が高い。 少数の出品が当たっている状態です。母数が小さいうちは、そのまま実力とは読まないでください
在庫回転率が「資金が回っているか」を見る数字なのに対して、この比較はどこを直せばいいかを絞り込む使い方になります。後半で扱う 3 方向のうち、仕入れ側を疑うのか、出品側と値付け側を疑うのかが、ここでだいたい決まります。
出すときの注意は 2 つです。
期間を揃える。 市場の側には 90 日の限定が付いているので、自分の側も同じ 90 日で出します。期間が違う数字を並べても、差が何によるものか分かりません。
終了させた出品も分母に数える。 売れないまま終了させた出品を分母から外すと、数字が実態より良く出ます。売れなかった事実が消える形の計算になるので、ここは意識して残してください。
eBay在庫回転率が低いとき、在庫が食べている4つのもの
回転が遅いことの何が問題なのか。「売れていない」以外に、4 つのものを消費しています。
資金。 仕入れに使った現金が、売れるまで戻ってきません。100 万円ぶんの在庫が半年動かなければ、その半年間、100 万円を別の仕入れに使えなかったということです。
場所。 自宅で作業しているなら、在庫は生活空間を圧迫します。作業スペースが狭くなれば、梱包の時間も伸びます。
時間。 在庫が増えるほど、数える対象と探す対象が増えます。「あの商品はどこにあったか」を探す時間は、売れていない在庫のぶんも発生します。
値。 相場は動きます。値崩れが起きる商材では、持っている時間そのものが損失になります。仕入れたときの想定売価で、半年後も売れるとは限りません。
この 4 つのうち、帳簿に出てくるのは最後の 1 つだけです。残り 3 つは、利益計算のどこにも出てこないまま効いています。
不良在庫という言葉は、売れない在庫を指すものですが、実際には「売れなくなる前から少しずつコストを払っている」状態が続いています。

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eBay在庫回転率を上げる手は3方向ある
回転が遅いと分かったとき、打つ手は 3 つの方向に分かれます。どれを使うかは、遅い原因がどこにあるかで決まります。
仕入れ側。 需要のない商材を仕入れていれば、値下げしても動きません。ここはセルスルーレートを見る場面です。仕入れの基準そのものを直します。
値付け側。 需要があって見られているのに売れていないなら、価格が市場からずれています。値下げ以外にも打てる手があるので、値付けの記事を見てください。
このあと紹介している記事 (5 本)
切る側。 どちらも試して動かないなら、損切りの判断になります。ここでいちばん効くのは、仕入れの時点で「いつまでに売れなければ切るか」を決めておくことです。決めていないと、判断を先送りし続けることになります。

3方向のうち、どれから試すか
3 つの方向を同時に動かすと、何が効いたか分からなくなります。順番を決めておくほうが、判断の材料が残ります。
おすすめの順番は、出品側 → 値付け側 → 切る側です。理由は、コストの順番と一致するからです。
出品側の修正は、タイトルや写真を直すだけなので、追加の費用がかかりません。値付け側は、下げたぶんだけ利益が減ります。切る側は、仕入れ値を下回る可能性があります。安いほうから試すというだけの話です。
仕入れ側の修正は、この 3 つとは時間軸が違います。今ある在庫には効かず、次の仕入れから効きます。今の在庫をどうするかと、次に何を仕入れるかは、分けて考えてください。
eBay在庫回転率と利益率は、たいてい逆を向く
回転を上げようとすると、利益率が下がります。値下げをすれば売れますが、1 件あたりの利益は減ります。
逆に、利益率を守ろうとすると回転が落ちます。値を維持すれば売れるまでの日数が伸び、その間、資金が寝ます。
どちらが正しいという話ではなく、同じ資金でどちらが多く稼ぐかという比較になります。
| 高回転・低利益率 | 低回転・高利益率 | |
|---|---|---|
| 資金の効率 | 同じ資金を何度も回せる | 1 回あたりの取り分は大きい |
| 作業量 | 件数が増えるぶん、梱包と対応が増える | 件数が少なく、手離れがよい |
| 相場の影響 | 短期で回るので、値崩れの影響を受けにくい | 持っている期間が長く、相場の変化を受ける |
| 向いている | 資金が限られていて、作業時間がある人 | 資金に余裕があり、作業時間が限られる人 |
投下資本利益率という考え方で見ると、この 2 つは比較できます。1 回あたりの利益率が低くても、年に何回も回れば、資金あたりの稼ぎは大きくなります。
自分がどちらに寄っているかを知らないまま、他人の利益率と比べても意味がありません。
回転が速い商材だけを選べばいいのか
「では回転の速い商材だけを扱えばいい」と考えたくなりますが、そう単純ではありません。
回転が速い商材は、競争も速い。 誰にとっても分かりやすい需要なので、出品者が多く、価格の下がり方も速くなります。回転で得た資金効率が、利益率の低さで相殺されることがあります。
回転が速いほど、作業量が増える。 同じ売上を作るのに件数が要ります。出品、梱包、発送、問い合わせ。作業時間が上限になっている人にとっては、回転の速さがそのまま制約になります。
回転が遅い商材にも、役割がある。 単価が高く、買い手が限られる商材は、動くまで時間がかかりますが 1 件の取り分が大きくなります。資金に余裕があるなら、こちらを混ぜるほうが総額は伸びます。
現実的なのは、回転の速いものと遅いものを混ぜて持つことです。速いものが日々の資金を作り、遅いものが取り分を作る。どちらか一方に寄せると、資金か時間のどちらかが先に足りなくなります。
比率の正解はありません。自分の資金と、使える作業時間のどちらが先に上限に当たるかで決まります。資金が先に尽きるなら回転側へ、時間が先に尽きるなら単価側へ寄せる、という考え方です。
eBayの在庫を3つに分けて、扱いを変える
全部の在庫を同じように管理しようとすると、手が回りません。動きの速さで分けて、見る頻度を変えるほうが現実的です。
- よく動くもの。 売上の大半を作っている少数です。切らさないことが最優先で、出品中の数量と手元の在庫を頻繁に合わせます
- ときどき動くもの。 定期的に売れるが、頻度は低い。月に一度の確認で足ります
- 動いていないもの。 一定期間まったく動いていないもの。ここは見る頻度を上げるのではなく、切る期限を決める対象です
3 つに分ける基準は、金額でも件数でも構いません。大事なのは、分けたあとで扱いを変えることです。分けただけで同じように管理していると、手間だけが増えます。
分け方で迷ったら、在庫金額の大きい順に並べて上から数えていくのが手早い方法です。上位の数点で在庫金額の大半を占めていることが多く、そこが「よく動くもの」と一致していれば健全です。一致していない場合、いちばん資金を使っているものがいちばん動いていないということになります。
分け直す頻度も決めておいてください。よく動いていたものが動かなくなることも、その逆もあります。四半期に一度、グループを入れ替えるくらいの頻度で足ります。毎月やると作業が増え、年に一度だと遅れます。
よく動くものの管理は、日次のルーティンに入ってきます。
eBay在庫回転率を上げすぎると、在庫切れが増える
回転だけを追いかけると、別の問題が出ます。在庫を薄く持つほど、売れたときに在庫が無い確率が上がります。
在庫切れで注文をキャンセルすると、セラー都合のキャンセルとして記録に残ります。取引不良率に影響し、水準を下回るとセラーレベルが落ちます。回転率という自分の指標を良くするために、eBay 側の指標を悪くするという交換になっていないかを見てください。
在庫切れのとき、出品を取り下げるか残すかという選択があります。
eBay には out-of-stock オプションがあり、有効にすると数量が 0 になっても出品は有効なまま、検索結果からは隠れます。数量を戻せば再表示されます。公式は、これが在庫切れによる取引不良を受けることから保護するのに役立つ場合があるとしています。
ただし、数量 0 のまま 180 日連続で続くと eBay が出品を終了します。隠して残しているつもりでも、いつまでも残るわけではありません。
検知と取り下げの判断は、別の記事で扱っています。
仕入れ先の性質で、eBay在庫回転率の読み方が変わる
同じ回転率でも、仕入れ先によって意味が変わります。
まとめて仕入れる場合。 一度に大量に仕入れると、仕入れた直後は在庫金額が跳ね上がり、回転率は下がります。売り切るまでの期間で均せば正常ですが、月単位で見ると悪く見えます。仕入れの周期と、集計の周期を合わせておくと読み違えません。
都度仕入れる場合。 売れる見込みが立ってから 1 点ずつ仕入れる形なら、在庫は薄く保てます。回転率の数字は良く出ますが、そのぶん機会損失が起きている可能性があります。「回転率が高い=良い」とは限らないのはこの場合です。在庫を持っていれば売れたはずの注文を、取りこぼしている可能性があります。
手元に在庫を持たない場合。 そもそも在庫金額が小さいので、回転率という指標があまり意味を持ちません。見るべきなのは、注文が入ってから調達できた割合のほうです。調達できずにキャンセルすれば、取引不良として記録に残ります。
仕入れ先の業態ごとの得意・不得意は、別の記事にまとめています。
もうひとつ、同じ商材でも仕入れ値が下がれば回転率は上がります。分子の売上原価が小さくなるからです。安く仕入れられるようになったこと自体は良いことですが、回転が良くなったのか、仕入れが上手くなったのかを取り違えないようにしてください。前者なら売れ方が変わっており、後者なら売れ方は変わっていません。
保有コストを、値付けの下限に入れる
もうひとつ、回転率と値付けをつなぐ考え方を書いておきます。
在庫を持ち続けることには費用がかかります。資金が寝ること、場所を取ること、値が下がっていくこと。この費用を、1 か月あたりいくらと置いておくと、値下げの判断が変わります。
たとえば、3 か月動いていない商品を 500 円下げるかどうか。このまま持ち続けるとさらに 3 か月かかるとして、その 3 か月ぶんの保有コストが 500 円を超えるなら、下げるほうが得という計算になります。
金額を正確に出す必要はありません。「持ち続けることにも費用がかかる」という前提を計算に入れるだけで、値下げをためらう理由がひとつ減ります。
逆に、保有コストがほとんどかからない商材もあります。小さくて場所を取らず、値崩れもしないもの。こうした商材は、急いで下げる理由がありません。同じ「3 か月動いていない」でも、商材によって答えが変わるのはここが理由です。
保有コストを考えに入れると、値下げは損失ではなく費用の付け替えとして見られるようになります。500 円下げるのは、その商品から取れる利益を 500 円減らす選択ですが、同時に 3 か月ぶんの保有コストを払わずに済ませる選択でもあります。どちらが大きいかを比べるだけの話です。
月に一度、同じ形で並べる
回転率は、単月の数字を見ても判断できません。大きな仕入れをした月は平均在庫が跳ね上がり、高額品が売れた月は売上原価が跳ねます。
見るなら、3 か月以上を同じ形で並べることです。並べたときに読み取れるのは、次の 2 つです。
分子と分母のどちらが動いたか。 回転率が下がったとき、売れなくなったのか(分子が減った)、仕入れすぎたのか(分母が増えた)で打ち手が変わります。回転率という 1 つの数字だけを追いかけると、この区別が付きません。
在庫金額の絶対額が増え続けていないか。 回転率が同じでも、在庫金額が毎月増えているなら、規模が大きくなっているか、単に売れ残りが積み上がっているかのどちらかです。売上が伸びていないのに在庫だけ増えているなら、後者です。
記録の形は何でも構いませんが、列を途中で変えないようにしてください。前月と比較できなくなります。
もうひとつ、季節性のある商材では、前年の同じ月と比べるほうが読めます。前月比だと、季節の山谷を「回転が良くなった / 悪くなった」と読み違えます。1 年ぶんの記録が溜まるまでは、前月比で見つつ、季節の影響がありそうかどうかを頭に置いておく形になります。
数字を出すには、在庫金額が分かっている必要がある
ここまでの計算は、どれも「今いくらぶんの在庫があるか」が分かっていることが前提です。ところが、この数字が出てこないという話をよく聞きます。仕入れの記録はスプレッドシート、売れたかどうかは eBay の画面。突き合わせないと在庫金額が出ません。
Trade Force は、eBay 輸出の商品・在庫・出品・注文・発送・売上をひとつの画面で管理する定額制の OMS です。仕入れた商品と、それが売れた注文が同じ場所にあるので、まだ売れていない在庫がどれだけあるかが常に見えます。回転率の分母が、日々の業務の結果として出てくる形です。
売上は期間を指定して確認でき、販売数・注文数・売上金額・手数料・返金額・入金額が並びます。期首と期末で在庫を見れば、平均在庫金額も出せます。
仕入れ先サイトの在庫と価格の変化を検知して取り込む在庫監視ツールもあるので、手元の在庫だけでなく、仕入れ元が切れたことにも気づけます。
Trade Force のサービス紹介からご覧ください。
動かない在庫を、初めてまとめて見る時期
回転の数字を出すより前に、動いていない出品を並べてみるだけでも判断はできます。始めてから 90 日が過ぎると、出したまま動かないものが母集団として初めて成立します。
まとめ
2 つの指標は、測るものが違います。 在庫回転率は自分の在庫が何回入れ替わったか、セルスルーレートは市場の出品のうちどれだけ売れたか。仕入れる前と、仕入れたあとで使い分けます。
セルスルー率には 90 日の限定が付きます。 季節性のある商材では、見た時期によって数字が変わります。
セルスルーレートは、自分の出品でも出せます。 市場の数字と並べると、原因が商材の側にあるのか、出品と値付けの側にあるのかを絞り込めます。
回転が遅い在庫は、資金・場所・時間・値の 4 つを食べています。 このうち帳簿に出てくるのは値だけです。
上げる手は 3 方向あります。 需要が無いなら仕入れ側、見られていないなら出品側、見られているのに売れないなら値付け側。それでも動かないなら切る側です。
上げすぎると欠品が増えます。 自分の指標を良くするために、取引不良率を悪くしていないかを確認してください。
よくある質問
Q1.在庫回転率は何回あればいいですか
商材で変わるので、目安の回数は示しません。トレーディングカードのように回転の速い商材と、買い手が限られる専門的な商材では、成立する水準がまったく違います。
比べる相手は他人ではなく、自分の前期です。同じ計算方法で並べて、向きを見てください。
Q2.セルスルーレートと在庫回転率は、どちらを見ればいいですか
用途が違うので、どちらかを選ぶものではありません。仕入れるかどうかを決めるときはセルスルーレート、仕入れたあとに資金が回っているかを確認するときは在庫回転率です。
セルスルーレートは市場の数字なので、自分で動かすことはできません。
Q3.eBayのセルスルーレートは、Terapeakを使わずに出せますか
目安なら出せます。eBay の検索で販売済み(Sold)に絞った件数と、いま出品中の件数を数えて割ります。
ただし、終了済みの出品の検索は過去 90 日までしか含まれず、検索結果には関連する別の商品も混ざります。Terapeak の数字とは別物として扱い、自分の中で式を 1 つに決めて使ってください。
Q4.セルスルーレートが100%を超えるのはなぜですか
販売済みの件数を、いま出品中の件数で割っているからです。分子は 90 日の累計で、分母は今日の時点の数なので、よく売れる商品ほど 100% を超えます。
売れた件数と残っている件数を合わせた数で割る式なら、100% は超えません。どちらが正しいというより、式が違う数字どうしを比べないことのほうが大事です。
Q5.セルスルーレートの90日の限定は、何に影響しますか
季節性のある商材で効きます。オフシーズンに見た数字をシーズン中の判断に使うと、需要を過小に見積もることになります。
逆に、シーズンのピークで見た数字を通年の前提にすると、仕入れすぎます。
Q6.回転率を上げるには、値下げするしかありませんか
値下げは 3 つの方向のうちのひとつです。需要が無い商材なら値下げしても動きませんし、見られていないなら出品側の問題です。
見られているのに売れていないと確認できてから、値付けに手を付けてください。
Q7.不良在庫(動かない在庫)は、いつ切ればいいですか
期限を後から決めると、判断が先送りになります。仕入れの時点で「いつまでに売れなければ切るか」を決めておくほうが、実際に切れます。
期限の長さは商材の回転で変えてください。同じ期限を全商材に当てないことだけ気をつけてください。
Q8.在庫を薄くすれば回転率は上がりますか
計算上は上がりますが、売れたときに在庫が無い確率も上がります。在庫切れによるキャンセルは取引不良率に影響します。
自分の指標を良くするために eBay 側の指標を悪くしていないか、両方を並べて見てください。
Q9.まとめ買いした在庫の、1点あたりの仕入れ値が分かりません
セットやまとめ売りで買うと、1 点あたりの原価がそのままでは出ません。このままだと売上原価が計算できないので、配分の方法を先に決めてしまってください。
やり方は 2 つあります。点数で等分する方法と、想定売価の比で割り振る方法です。状態や価値が揃っているなら前者、1 点だけ高いものが混ざっているなら後者のほうが実態に近くなります。
どちらでも構いませんが、決めた方法を途中で変えないでください。計算方法を変えると、改善したように見えて実は方法が変わっただけ、ということが起きます。
Q10.セルスルーレートは何%あれば仕入れていいですか
判断の基準となる水準は、リサーチの記事に一本化しています。この記事で作り直すと、同じサイトの中で数字が割れるためです。
そのうえで、水準を当てる前に確認してほしいことがあります。その数字がどの期間の検索から出たかです。セルスルー率には「90 日以内に販売された商品の検索に対して」という限定が付いているので、期間の設定を変えると読み方が変わります。
季節性のある商材では、オフシーズンに見た数字とシーズン中に見た数字で判断が逆になることがあります。水準だけを覚えて、期間を見ないまま使わないでください。
参照リンク
本記事で参照した eBay 公式のページです。仕様は変更されることがあるため、実際の運用にあたっては最新の内容をご確認ください。
- eBay ヘルプ 製品調査 — セルスルー率に付く「90 日以内に販売された商品の検索に対して」という限定、終了済みの出品の検索が過去 90 日までであること、eBay の検索結果に関連する結果が含まれること
- eBay ヘルプ マルチ数量出品とバリエーション情報を含む出品 — 在庫なしオプションの動作、数量 0 が 180 日続いた場合の扱い、販売履歴とベストマッチの関係
在庫回転率そのものは会計上の一般的な指標で、eBay 固有の制度ではありません。セルスルーレートの判断の基準となる水準は、リサーチの記事に一本化しています。






